兄さんは勉強家ですから、これまでにたくさんのビジネスや経営の本を読んでこられたことでしょう。
しかし、この本は読んでもらえば分かると思いますが、これまで読まれてきた本とは全く違うタイプの本です。私などは感動して、ほんのちょっぴりですが泣いちゃったぐらいです。
たいていのビジネスや経営の本は、成功した経営者自身やそういう経営者に取材した人が、そのノウハウや経験を紹介するというものがほとんどだと思います。
定番は、本田宗一郎・松下幸之助・盛田昭夫などがそうで、新しいところではITやネット収入で成功した人々の著書がそうです。
いずれもすばらしいのですが、しかしながら多くの場合、これらは参考にしにくいのではないでしょうか。
というのも、こういう経営者や企業ははじめから偉大なのです。もちろん創業期は弱小だったり、借金を背負ってのスタートだったりの場合もありますがごく早い時期から急激な成長をし、偉大さを維持し続けているのです。またITやネット収入関係で成功した人々も偉大なのですが、その成功は今のところ短期的なもので、その偉大さを今後維持できるのかどうかは未知数です。
それに対し、世の中のほとんどの企業や人間は「平凡」であり、その平凡さから抜け出せないのです。いかにすれば「平凡」から「偉大」になり、それを維持できるのか。
多くの人が本当に知りたいのはそこです。
もちろんわれわれから見て、兄さんはすでに偉大です。しかし、兄さん自身はそうは思っておられないでしょう?そういう兄さんだからこそ私はこの本をお薦めするのです。
この『ビジョナリーカンパニー2』は、
@ 15年以上にわたってごく平凡な状態を続けていたが、
A ある時期をさかいに偉大な水準にまで成長し、
B そしてその後15年以上その偉大さを維持し続けている、
そういう企業を探しだし調査して書かれた本です。
※すべてアメリカの企業でしかもかなり地味な企業ばかりです。しかし業績は「偉大」です。
そういう企業を調べていくと、そこにはいくつかの共通点がありました。
しかしこの本は、単純に共通点を紹介するような愚策はとっておりません。
賢明な兄さんならお察しの通り、共通点がイコール「法則」とはいえないからです。
たとえば、オリンピックの金メダリストを調査すれば、「すべての金メダリストにはコーチが付いていた」という結果がでるはずです。これをもって「金メダルを取る決め手」とすることは馬鹿げております。金メダルを逃した他の多くの選手にもコーチは付いているからです。調べるべきは、「金メダルを取れた選手ととれなかった選手の違いを一貫してもたらしている点は何か」です。
そのためこの本では「飛躍した企業」の比較対象として、同種の事業を展開し、転換期に同じ機会があり、保有する資源も同程度あったが、「飛躍できなかった企業」をも調査しております。
さらに重要な点は、この本はすべてデータに基づいて導き出された結果や事実から直接に理論や法則を構築していこうとしていることです。この手の本にありがちな、もとからあった理論を証明するために都合の良いデータだけを取捨選択して、自分たちの考えの正しさを主張している本ではないのです。飛躍した企業とそうならなかった企業とを対照させて「どこに違いがあるのか」を常に問うています。
また、「犬がほえなかった事実」にも注意を払っております。
シャーロック・ホームズは名作「銀星号事件」のなかで、事件の夜、犬がほえなかった事実に着目します。ホームズによれば、なにもなかったことこそが重大であり、この点から犬がよく知っている人物をまず疑うべきだと推理しました。
この本の調査でも、飛躍をもたらしたブラックボックスの中にあったものだけでなく「なかったもの」にもおおいに着目しております。
一例を挙げると、報酬の形態と飛躍との間には一貫した関係は見つかっておりません。報酬の構造が企業の業績を向上させるカギになるとの見方がありますが、この見方を裏付ける事実はありませんでした。報酬はなにより安心してその会社で仕事を続けられるかどうかが重要です。
以上のような観点から発見された「飛躍の法則」ともいえる概念は7つありました。
この7つの概念は飛躍した企業のすべてに100%共通し、なおかつ、飛躍できなかった企業では30%以下しか見られなかった事実です。
以下の「もくじ」の2章から8章までがまさにそれです。 |